甲府

二日目、またタクシーで勝沼ぶどう郷駅へ。中央線・甲府駅で降りる。甲府市観光案内所でJR東日本の“駅からハイク・いつでもコース”の受付を済ます。「七年に一度の勝縁!甲斐善光寺御開帳と甲府の街歩き」に参加したのだ。

まず“舞鶴城公園”に行く。舞鶴城は甲府城の別名である。一日目に行った勝沼の柏尾古戦場跡の説明によると、当初近藤勇ら幕府軍はこの甲府城に入り官軍を迎え討つ予定であったが、官軍に先に入られてしまい、やむなく柏尾山の麓で戦ったということだ。この城址修復の比較的早い時期から何度か訪れていたが、立派な城址公園が出来上がっていた。稲荷曲輪から稲荷櫓と進み、その先の広場の東屋で休憩、すぐさま日本酒で乾杯。静かで、空気も酒も美味し。鍛冶曲輪を行き遊亀橋から出る。

つぎなるコースの“甲府市役所展望ロビー”と“能成寺(のうじょうじ)”はパスし、“印傳屋”に入る。印傳(いんでん)は甲府の伝統的な加工品で鹿の皮に漆で細工を施したもので財布や、印鑑ケースなど種々ある。店内を見て次の“東光寺”に向かう。

東光寺では目当ての一つが“仏殿”(重要文化財)であったが生憎修復中で、その素晴らしいカーブの二重屋根は上の部分しか見えず誠に残念であった。この仏殿は武田滅亡後、織田信長により焼かれたが仏殿だけが焼け残り、また甲府大空襲(昭和20年)でも仏殿だけが焼け残ったそうだ。結局、本堂には上がらなかった。8年前に来たときには本堂の縁側に座り庭園を眺めながら静寂を満喫したものだった。

“かいてらす(山梨県地場産センター)”を経由して“甲斐善光寺”に入る。さすがに人はやや多い。金堂にあがり、ご本尊(阿弥陀如来)に向かって拝む。秘仏で直接目にすることはできない。手を打って天井の鳴き龍を聞く。そして戒壇廻りだ。階段を下り真っ暗な通路の壁を頼りに手探りで歩く。ちょうどご本尊の下にある鍵に触れるとご本尊とご縁が結ばれるという。確かに触れた。階段を上がり金堂を出る。宝物館を見学したあと、金堂前に立てられた回向柱に触れ四人が再び何事か念ずる。そばに案内の若い女性が待機していて、勧めもあり回向柱に触れながらの記念写真をお願いした。御開帳もあと二日を残すのみであった。

酒折(さかおり)宮を経由して中央本線・酒折駅にゴールした。うす曇りではあっが、じっとりと汗ばみ約5kmとはいえけっこう疲れた。

相模湖駅に途中下車し、駅前の懐かしい“かどや”でうす暗くなるまで打ち上げをし帰途についた。

今回の旅(勝沼と甲府)は、時間に追われた二日間であった。もう立派な老人たちであるから、次回からのんびりしたスケジュールにしよう。

勝沼

5月下旬、高尾駅に4人が集まり、中央本線・勝沼ぶどう郷駅に降りる。駅を出て左に線路沿いを行く。ぶどうの丘やぶどう畑、南アルプスの山並みなど眺めもよくプラットホームに見立てた屋根つきの休憩所まであり展望ポイントとなっていた。

そばの階段を上がるとすぐ大日影(おおひかげ)トンネルだ。煉瓦造りで線路もしっかり残っていた。明治36年に開通、特産のぶどうやワイン、樽などの輸送に大いに寄与したとのこと。平成9年に廃止、平成19年に遊歩道として整備された。30分ほどで通り抜けられた。通り抜けると深沢口トンネルがあり今はワインカーヴ(貯蔵庫)として活用されている。トンネル内をぶどう郷駅に戻る。戻る際下り勾配に気が付いた。

駅前のタクシーで“ぶどうの丘”に行く。ぶどうの収穫時期でもなく、平日でもあり人は少ない。売店の地下ワインカーヴに降り白、ロゼ、赤と試飲する(有料)。そこを出て近くの店に入り、“思蓮(おもれ)ほうとう”を食べる。ぶどうに多く含まれているポリフェノールが麺に練り込んであるのだそうだ。このぶどうの丘は“思蓮山(おもれやま)”と呼ばれていたとのことで名づけたそうだ。ぶどうの丘からのぶどう畑や山々の景色も緑がいっぱいで気分がいい。

タクシーを頼んで柏尾古戦場跡に行く。近藤勇ら幕府軍と板垣退助ら率いる官軍が戦ったところで、山梨県内では戊辰戦争での唯一の戦いがあった場所とのこと。近藤勇らは敗走した。ちなみに土方歳三は援軍要請に江戸に向かっていて参戦していないという。柏尾橋の側で、近藤勇の石像もあり、それなりに整備されていた。

そこからすぐの大善寺に行く。国道から右に入り脇道を行く。山の麓にある本堂(薬師堂)前に出た。この本堂は国宝で、すっきりと裾を広げた檜皮葺の大屋根が見事だ。本堂の前に菩提樹があり、ちょうど花が満開で、ほんのり甘い香りがした。木の下には丸太の椅子があり“瞑想してみては”との説明書き。大善寺はぶどう寺と言われており、平安時代初期のぶどうをもった大善寺本尊薬師如来像と日光・月光菩薩像は秘仏として厨子(国宝)に納められており拝むことはできなかった。厨子両脇の須弥壇上にある鎌倉時代の日光・月光菩薩像と十二神将立像は国指定文化財とのこと。元気いっぱいの女性が滔々と説明してくれた。拝観後、長い石段を下り山門を出て大善寺に入る。きょうの宿だ。大広間で冷たいお茶を飲みながら、のんびり休んだあと部屋に入った。

さっそくお風呂に入る。大きな浴槽で気持ちが良い。何故か上がり湯が出なかった。部屋で寛いでいたが夕食の頃合いになっても何の連絡もない。しびれを切らして食堂を覗くとすでに準備はできているようだ。よく見ると入口に食事時間の張り紙があった。食事をしていると、最前の元気な女性(どうも女将さんのようだ)が入ってきて“上がり湯が出なかったでしょう”と行って謝った。昼間の電気工事で電源が切れたままになっていたそうでおかみさんも我々も大笑い。寝る前にまた風呂に入ったが、今度はちゃんと湯が出た。 甲府につづく。