とまりぎ
2007.11.1
毎年10月にある、日本温泉協会主催の旅は雑誌「温泉」によると、今年は松之山温泉とのことであった。過去に行ったことのあるところだな、と思いつつ「とまりぎ」の仲間へ連絡した。しばらくして、詳しい案内書が届いたのを見ると、泊まりが「凌雲閣」とある。なんと十日町在住の友人が、昔連れて行ってくれた宿だった。
大宮駅集合で、4人が新幹線に乗る。越後湯沢で降り、北越急行に乗り換え、バスが待っている"まつだい駅"までは時間もあるし、そこにはなにしろ何もなさそうなので"十日町"で降りる。"へぎそば"と立寄りの温泉が目的である。
駅前の商店街を抜けると比較的近くにある、小島屋本店へ入る。正午にはまだゆとりのある時間だが、すでに多くの客が入っている。日本酒(八海山)を頼み、一緒に出てきたつまみでやっていると、"そば"が間もなく"へぎ"にいっぱいになって出てきた。東京でも同種の蕎麦を出す店はあるから、然程とりたててどうという反応はなかったのだが。
次はこの町の中にある温泉「明石の湯」だ。地場産業の特産品などを展示販売している道の駅ビルに入ると、温泉。単純泉のおだやかな湯に、しばらくゆったりと入る。外は塀で仕切られているので、眺めは特別ないが、雨が降ってきたようだ。また今年も雨かという、このところ毎年たたられている雨に少々うんざり。風呂を出て休憩所でまた日本酒で一杯。
雨中を駅まで。"まつだい駅"はひと駅だが、トンネルが続いてかなりの時間乗っていたような感じだ。駅前にはバスが待っていて、すでに顔見知りの人達が乗り込んでいる。20分ほど揺られていると、目的地近くの集会所へ着く。ここで温泉の専門家の講演があり、松之山温泉が古くは薬湯といわれていたことをなど知ったあと、またバスで宿へ。
まず、温泉へ入る。塩化物泉の塩辛さと苦さを感じながら、皆一杯味を見る。これが江戸末期から明治のころ有馬、草津と並んで日本三大薬湯だと思うとなにかありがたい。宴会場で目の前に来た見覚えのある女将に、十日町の友人と4人で6年前に来ていることなど話した。料理はこれでもかというくらいに次々と出てきて、最後に地元魚沼産の"ごはん"を酒豪氏が食べ、旨いから食べたほうがいいと言うので頑張った。腹いっぱいで二次会へは行けずに寝る。
翌日も朝食前に朝湯へ入り、外は雨上がりの晴。予定の時間で、バスへ乗り込み全員で午前中に源泉、天水島の棚田、大棟山美術博物館(坂口安吾の遺品展示がある)、美人林(ブナが美しい林)へ連れていってもらう。ガイド役は動きやすいスポーツウェア姿の宿の女将。美人林から戻ると、里山科学館「森の学校キョロロ」にある食事どころで昼食。それではと日本酒を頼みゆっくりと昼食を楽しんだあと、里山科学館を端から端まで見て、これで本日の見学はおしまい。
バスは越後湯沢駅まで送ってくれ、駅前でまた来年会いましょうと解散。予定の新幹線にはまだ時間のゆとりがあるので、4人はあれこれと土産物屋を見ては試食品の味見をした。狙っていた大根の甘酢漬があるかと何軒かで聞いたが、時期はずれなのかどこにもない。それで別の大根のつけものを求めてみやげにしたが、重いだけで家での評判はあまり良くなかった。野沢菜のほうが良かったのかもしれない。
昨晩の宴会のときに、全員が地元魚沼産の棚田米を一袋づつもらって、これも重たいがさらに大根の漬物の重さも加わり、大宮駅で降りて目当ての店まで歩くのもちょっときつい。これも旅の仕上げの一杯のため。
次の「とまりぎ」の旅は皆の都合を合わせると後ろへ延びて、5人で12月に八ヶ岳の麓の温泉へ行くことになったのだが、寒くなっている頃だろうなと想像する。計画に思いを馳せるのも、これもまた旅のたのしみのひとつである。