とまりぎ
2007.8.3
中央本線と小海線にはさまれて南北に八ヶ岳連峰がある。1966年の8月夏、とまりぎ仲間の酒豪氏と二人で北八ヶ岳を歩いた。北八ヶ岳は天狗岳から北へ大河原峠あたりまでの地域だそうだ。大河原峠の先に蓼科山がある。
登山客でいっぱいの新宿発長野行き夜行に乗り翌朝茅野駅に降りる。バスの終点「渋の湯」から天狗岳2645.8に向う。青空に白樺と無数に飛ぶ赤とんぼが印象的であった。さほどきつい登りではなかったが、夜行による睡眠不足とカンカン照りにいやになる。黒百合平、スリバチ池を過ぎたあたりで、どうにも眠く大きな岩が組合わさった洞(うろ)を見つけて昼寝をした。目が覚めると1時間ほど経っていた。
天狗岳からは南方に主峰の赤岳2899.2や阿弥陀岳2805が眺められた。尾根筋を北へ、中山峠を経て中山2496に登り、きょうの泊まりである高見石小屋に着いた。小屋の脇からごろごろした大きな岩を登りきると眼下に広々とした樹海と、その中にひとつの巨大な目のような白駒池が見おろせる。高見の大きな石に猿のように腰かけ静寂と夕暮れを楽しんだ。
翌朝、高見石より原生林のなかを白駒池へ降った。木々の多くは朽ちていた。北八ヶ岳で一番大きい白駒池は、人影もなく静寂そのものだった。数年前にバスハイクで行ってみたが駐車場から15分ほど歩いたら白駒池に着いてしまい拍子抜けしたものだ。麦草峠に向い30分程で工事中の車道に出て、そのまま進むうち酒豪氏が黒い石を見つけ黒曜石だという。道路工事のおじさんが「もっと黒いやつがある」とその場所を教えてくれた。そこで手ごろなものを5~6個ザックにしまったが、石の中には白い泡があり質は良くなさそうだ。麦草峠は広々とした草原で花も多く気持ちのよいところだった。
麦草峠からは茶臼山2384、縞枯山2403と登り坪庭というところに出た。坪庭は溶岩の台地で、そのなかに深い緑の這松が点在する素晴らしい景観であった。坪庭を横切って北横岳2472.5に着く。近くの七ツ池の水が飲めるというので喜び、飲んでみたが生ぬるくおまけにヌルヌルしているような感じがした。北横岳から大岳2382を経て双子池(雄池、雌池)に着き、双子池ヒュッテに泊まった。その夜は泊まり客の営林署の人から高山植物(花)の話を聞いたりして過ごした。
最終日の朝、熊笹の中を双子山2223.8に向った。椀形の広々とした山頂は眺めもよく、そよ風が心地よかった。大河原峠に着いたところでわがままを言って別行動にした。酒豪氏は予定通り天祥寺原を経て蓼科湖に。こちらは蓼科山2530.3に登って蓼科湖で合うことにした。蓼科山の山頂からの眺めは、晴れすぎてモヤがかかり期待外れであった。蓼科湖ではプールでしばらく泳いでから帰途に着いた。帰りの急行列車は立ちっぱなしで新宿までがやけに長かった。