小さな庭園

とまりぎ

2006.2.4

東京の新しい公園には、水元公園、舎人公園のようにかなり大きなところが多い。これらは今も工事中のところがあって、完成時の形はさらに大きく整備されるものと思われる。今回紹介の公園はこのように大きなところでなく、古くからあったのだが、それゆえに忘れられたような小さな公園で、今も訪れる人を待っている。

ひとつが向島百花園。約200年前の文化・文政時代に開設されたという。開園当初は、360本の梅が主体で、当時有名だった亀戸の梅屋敷に対して「新梅屋敷」とよばれたそうだ。今も梅の木があり、季節には梅まつりが開催される。

芭蕉句碑「春もやや けしき ととのふ 月と梅」

その後、日本の古典に詠まれている有名な植物を集め、萩のトンネルは有名。最寄駅は東武日光・伊勢崎線の東向島から約8分、一部が明治通りに接しているため、場所はわかりやすい。明治通りの百花園入口交差点から塀沿い奥にある。中へ入ると、明治通りがすぐ外を通っていることなど忘れてしまうほどよくできている。

広さ10,886平米をうまく使って、高木1,040本、低木550株とともに四季の草花が観賞できる都立の公園。隅田川白鬚橋が比較的近くで、墨堤通りに白鬚神社がある。広重の東都名所「隅田川橋場の渡」には手前に隅田川をわたる舟と遠景には筑波山があり、岸辺の緑の奥に満開の梅林が描かれている。橋場という地名は浅草の北に現存する。入園料150円。

 もうひとつが堀切菖蒲園。百花園とそう違わない時期に当地の農民によって菖蒲が栽培されたのが始まりとのこと。昭和50年4月都から葛飾区へ移管され、毎年6月水元公園と同時に葛飾菖蒲まつりが開催されている。

最寄駅は、京成線堀切菖蒲園から徒歩15分と遠くわかりにくいが、商店街を南へ向い大通りを越え、荒川・綾瀬川堤防とその上に通る首都高が目安になる。庭園から見ると、またその首都高が目障りでもあるのだが。

広さ7,700平米のほとんどが花菖蒲200種6,000株であるから、菖蒲の時期以外は来園者も少なくさびしい。広重の一枚に東都名所「堀切の花菖蒲」がある。菖蒲の先にはずっと続く田畑が見晴らしよく描かれているのだが、現在は近くまで家があって、雰囲気はだいぶ違っている。入園無料。

 

 二つの庭園は、荒川をはさんで、比較的近い。堀切菖蒲園からさらに南、下流へ向い、国道6号で荒川新四つ木橋を越えると、葛飾区から墨田区へ入り東向島駅を通る。江戸時代に作られたままの規模であるから小さく、両庭園とも駐車場はないものと思ったほうがいい。