角田 稔
2006.7.23
目立ちだしたビデオテープの山をごっそりと捨てた。
今でもながら勉強と言うのがあると思う。音楽を聴きながら、或いはラジオを聞きながら勉強をする事をいうが、人間誰も同時に別々の仕事をするのは難しいはずだと、厳しく戒められた。これを気にしながらもラジオや音楽を聞きながら読書したり勉強したものである。意外と読書に集中できるのが車中であったり、ふと妙案が浮かぶのが雑音の多いところであったりすることを言い訳にして、それらしく雑音と思考力の関係を考えてみたりもした。
しかし、視覚の場合はこうは行かない。テレビを見ていると、別の仕事をするのは難しい。後刻暇な時に見ようと録画したテープが山になって、捨てざるを得なくなった次第である。往年の名画、例えば第三の男、望郷、戦場にかける橋、風と共に去りぬ・・・・・・。名指揮者、例えばストコイエフスキ・・・・・。名演奏家、例えばハイフェッツ、メニューイン、ルビンシュタイン、・・・・、歌舞伎名優、例えば菊五郎、歌右衛門・・・・・、美術館、城郭、秘境。取り出して表題を見ると観たくなるがその時間は無いわけである。
したがって捨てることにしたが、理由は他にもある。この頃はDVDやCDなど新しい媒体によって美しい画像と音声、音楽を選んで楽しむことが出来るし、これぞわが宝とばかりに買い求めて書棚に並べておくことも出来、さらにはインターネットでお好みの映画を鑑賞することも出来る。もったいないけれど、ビデオテープはもう必要あるまいと思うようになった。音楽テープも中身は捨てたが、ケースは手ごろなカード入れ、テープ収納ケースは整理箱として再利用しているが、ビデオテープの場合は利用法を思いつかなかった。かくて廃棄と決定。
先だって光ネット導入の誘いを電話してきた女性が美しい声で、お望みの映画を何時でも自由に見られるのですよ、便利で楽しいですよと盛んに勧めてくれたが、なるほどとは思いながら、そんなに時間をひねり出せるかなと不安を感じたのも事実である。正直なところこの頃流行の韓流映画も余り観ないのですよと言ってみたところ、勧誘に意気込んででいた若い女性はさもがっかりしたと言わんばかりにため息を漏らしていた。尤も、導入してみたら一番喜んだのは最多忙であるはずの娘で、眠る時間も惜しんで映画鑑賞している。特に韓流映画は面白いらしい。彼女の場合はワールドサッカーの録画などもしているので、趣味に時間を捻りだせるだけの若さとエネルギーがあるようである。
同じ思いの人も居るのか、燃えないごみ専用の府中市役所設置のゴミ箱に数十巻のビデオテープが廃棄してあった。我が家に残っているビデオテープも何れ同じ運命を辿ることであろう。