メキシコ国立工科大学のキャンパスにて

中野 章

2000.10.1

 

電気通信大学の海外提携大学(20余大学あると聞いている)の一つにメキシコ国立工科大学(InstitutoPolitecnicoNacional:略称IPN)がある。ここ数年わが電通大の修士課程に1~2名の学生が留学している。
 メキシコ市内およびメキシコ国内主要都市に存在するキャンパスのの総数20ヶ所を超える。
 これらのキャンパス群には傘下の高等学校、工学系、理学系、医学系や経済経営学系の学部、大学院と専門研究所が配置されている。名称からは理工系専門大学の印象であるが実態は、まさに総合大学である。
 登録学生総数30万を超えるマンモス大学でもある。そんな大学のキャンパスの一つ「クルワカンキャンパス」に縁者が奉職しているので、ある日このキャンパスを訪れた。特に所用があったわけではない。
 ここは通信・情報工学系、機械工学系の学生が学んでいる。
 学生数3000名ぐらいで規模的には丁度電通大ぐらいの印象をうけた。

 今私はそのキャンパスの一角の木陰のベンチに座って行き交う教職員や学生達をぼんやりと眺めている。彼等もぼんやりと座っているこの私を特に奇異の眼で見るわけでもない。
 余談だが、市内の繁華街を歩いていて、時々メキシコ人から道を聞かれたぐらいなので、メキシコ人に見られたのかもしれない。メキシコ人の半分の血は日本人と同じモンゴリア系だという話をここでも納得する。
 そのうち、ふとある事にに気がつく。
 その一つは女子学生の多さである。電通大でも近年とみに女子学生が多くなったと聞いていたが、ここは比率からいってもっと多いと思った。後ほど縁者に確かめたところ、約3割が女子学生であり、最近急激に増え、特に情報工学系に著しい由。マチスモー男性優位の国メキシコでも女性の社会進出の大波が訪れているのであろう。ちなみに人口1800万を擁する今のメキシコ市長は女性とのこと。
 気づいたもう一つは学生と先生との行き交う時の学生の態度である。

 

学生が面識のある(と私は思うのだが)先生と行き逢うと、学生の方から積極的に近づき握手したり、なかにはハイタッチしている。
 古い古いO.Bの私達が学生のころは先生に行き逢うとどちらかといえば、敬遠気味にできれば避けようとしたものである。さて現在は電気通信大学のみならず日本の大学ではどうなのだろうか?この疑問は後ほど明らかになる。
 さて依然としてベンチに座り込んでいる私を珍しく注視しながら前を通りすぎる学生とも教職員とも思われる人物がいた。彼は私の目の前を10歩ぐらい通りすぎたところで立ち止まり首をかしげた。こちらもウン!と思った途端、つかつかと近づいて「ナカノさんですか?」と日本語で声をかけてきた。
 思い出した。R君である。R君は去年一年間電気通信大学のマスターに留学していた。
 我が家にも一度尋ねてきたことがあり、愚妻の見よう見真似のメキシコ料理とも言えない料理を愚妻が恐縮するぐらい喜んでくれたことがある。
 帰国後IPNでドクターコースの学生をしながら助手として奉職しているとの由。キャンパス内を案内してくれるというのでお言葉に甘えることにした。
 途上、日本語、英語とスペイン語の大チャンポン語の会話で彼が言うには電気通信大学とメキシコの大学の違いで一番感じたことは学生と先生の関係でハイタッチのメキシコ、敬遠の日本とのことだったとのこと。
 今も昔もその辺はあまり変わっていないと先ほどの疑問の答えは出た。
 いろんな研究室を丹念に回り、諸先生を紹介してくれ、先生方も突然の訪問にもかかわらず、教育、研究内容を説明してくれた?が不肖評価レベルを持ち合わせない私には評論のしようがない。只教育研究資材がチョット古いかなという印象であった。失礼。
 ただ、FM放送局を持ち、キャンパス周辺ローカルエリアに電波を流していることとマンモス大学として当然のことかもしれないが各キャンパスを結んだTV会議、遠隔授業設備をもっているのはさすがと思った。