「どぼん」と「ざぶん」

中野 章

1998.4.12

近頃の日本は一体全体どうなったの。

 大企業の倒産、貸し渋りや高級エリート官僚の汚職などいやな話と小企業に関わるものとして身につまされる話が多すぎる。
 日本の現状は一瞬の内に全世界に報道されるので、取引先の外国企業は支払いのことを心配してくるは、アメリカの日系3世の友人は「日本は大丈夫かね?」、外国在住の娘は「日本を脱出してこちらでのんびり暮らしたら?」と電話してくる。
 そんないやな話の中で一番情けないと思ったことがある。
それは「どぼん」と「ざぶん」という言葉である。

 新聞の解説によると、接待の程度を表現する日銀内部の隠語だそうだ。

「どぼん」が料亭から2次会、3次会と流れる本格的なやつで、「ざぶん」はレストランでの軽い食事程度だそうである。(反対かもしれない)接待をうけ、何らかの便宜を計るのはもちろん論外であるが、この言葉のもつデリカシーのない音感がなんとも情けない。

 日銀の行員といえば、大蔵省のキャリアに匹敵するエリートであろう。知識も教養も高水準と思っていたが、この隠語のセンスはまるでチンピラ並だと思う。東大出の集まりならばせめてフランス語かラテン語から借りて欲しかった。もっともそんなセンスだから平気で接待を受けたのだろう。

 「太った豚になるより、やせたソクラテスになれ」元東大総長の卒業式の言葉は今いずこ。