中野 章
1997.2.1
この度、外国の大学、国内のLSI設計製作会社と共同で移動体通信器用LSIを共同で開発することになった。
開発しようとするLSIの内容は後日述べるとして、普通、日本では中小企業がLSIの開発をしようなど気違い沙汰と受け止められるだろう。
ところが米国にはMOSISなる機関が主として大学でのアイディアをLSI化してくれるのだ。
その仕組みはこうだ。まず年度初めに各大学からLSI試作の要望を受け付ける。8インチのウエハーのある面積(たとえば4チップ分)を割り当て試作してくれるというものである。
これへの対価は$600~$1000ぐらいである。米国でユニークなLSIがどんどん開発される秘密の一端はここにあるのではないだろうか?
今回の共同開発のLSIのアイディアはテキサス農工大学、メキシコ首都大学からでたものであり、MOSISに対する依頼窓口はテキサス農工大学になる。われわれ日本側はチップ試作後の展開が受け持ちになる。
このような組織は台湾、韓国、ヨーロッパでもすでに活動を始めたと聞いている。翻って日本では東大の先端研で始めた?とのことであるが我々ベンチャーシステムハウスに身近なものとの感じはない。
エレクトロニクス系の新しいアイディアは、コスト、商品の省電力化、小型化および知的所有権の保護の面からも、これからはどんどんLSIに落ちていく,あるいは落としていくべきだと思うのは私だけではない。
ベンチャーが良いアイディアを持ち、それをLSIに具現化しようとしても一声1000万の初期開発費がかかるとすればなかなか踏み切れないのではなかろうか。10万円程度でとりあえず試作チップが手には入るのなら、それこそ「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」でその中からある確率で世界的に大ヒットするLSIが生まれるのではなかろうか?
MOSISには全米科学財団からの資金が投入されているのがローコストの秘密である。いま国、地方自治体および民間ベンチャーキャピタルをあげてベンチャー支援ブームであるが、その金の一部をLSI試作機関の創設と維持に当てて欲しいとの思いや切である。日本の大企業つまり世界的大企業がシリコンバレーの創業数年程度のLSIベンチャーと提携云々の記事を目にすることが多い。そのことに文句をつける気はないがちと淋しいね。あえて言う。このままでは日本のエレクトロニクス技術は数年のうちに台湾、韓国に抜かれ2流3流に落ちるのではなかろうか?
「いや、もうそうなっているよ」という辛辣な人もいる。
参考までにMOSISのHOMEPAGEのURLを記載しますから興味のある人はアクセスしてみてください。(MOSISは南カルホニア大学に付属しているようです)そのシステム、値段表等詳しく出ています。
MOSISのホームページはhttp://www.mosis.org/です。