発音

今が好き♪

1999.8.1

10年ほど前の1月、仕事でインド西部の商業都市ボンベイ(現在の現地名ムンバイ)を訪れたことがある。米国のフロッピーディスク装置メーカーの在インド保税工場からの引合いで、弊社が国内のT社向けに開発した試験装置を500台ほど購入したいとのことで、その打合わせを彼の地で行ったのである。技術担当の同行者も私も、挨拶や日常の会話は英語でも何とかなり、海外旅行でもそんなに不自由はない。先方も英語はOKだとのことであった。

さて、こちら2名、先方5名、双方名刺交換・自己紹介のあと、会議前置きの話しに入ったのだが、どうも通じない。こちらは英語なのに、むこうはヒンズー語を使っているのである。契約上の誤解がないように先方で通訳を用意してくれていた。「ヒンズー語でなく、英語を使うようにいってくれませんか。」我々が通訳嬢に言うとと、彼女は笑いながら、「向うも日本語でなく、英語を使ってくれと言っています。」というではないか。なんと、お互いの英語が相手には、先方の母国語に聞こえたのである。しばし、爆笑がやまず、我々はいっぺんでうちとけてしまった。
通訳は現地商社マンの若奥さんで、サリー姿がよく似合い、来日した事はないとのことだが、正確な日本語を話して我々を感心させた。もちろん英語もOKだ。

Anythingがエネテン、Otherwiseがアタルワイズと聞こえるなど、全体にねばっこい発音で、THのHを無視する、Rは発音すると言った彼らの癖を飲み込み、英語と思って聞くと結構通じるようになったから不思議だ。先方もカタカナ単純母音を理解したのか、その後は英語・母国語まじりの通訳介入で話しが進むようになった。
 ことほどさように、母国語の発音はどこの言葉を話そうと付いて回ると言う事であろうか。そういえば、我々日本人同士の英語はお互いに分かりやすい。

ところで、かんじんの商談は以外や長引き、予備日、観光日もつぶしての打合わせになってしまい、それでもまとまらずに5日間の滞在で帰国。半月ほど後に、今度は日本に来てもらい、東京で再度、金額のすりあわせを中心に打合せを行ったのだが、結果的に失注。中国人・ユダヤ人はいざ知らず、インド人との商談は厳しいと言うのは本当だったのである。やれやれ!