今が好き♪
1999.5.1
育ちの善し悪しは、食事のマナーで解かります。コメディアンの萩本欽一さんは劇団員の採否を、食事で決めると言い、関東でも関西でも、落語家は食事をさせて弟子入り希望者の資質を計ると聞きます。
近頃、ファミリーレストランがどの街にもあって、土日は外で食事という家庭が多くなりました。おかげで、他人の食事ぶりを見る機会も増えました。注意をしていると年配者にも見受けられますが、多いのは若い人、半数は箸の持ち方がダメ。あしを組むのはまだしも、立ち膝がいます。ご飯茶碗をもたずに、置いたままの茶碗に口をあてて、かっこみます。おかしな食べかたをあげたらきりがありません。ここでも、若い女性、それもお母さん方は問題です。子供が騒いでも知らん顔、まれにしかったりしますが、言うことを聞く子供はほとんどいません。普段から、こうした公共の場所でのしつけをしていませんから、急にその場で教えても子供には通じないのです。自分はさっさと食べてタバコ、若いお父さんは小さい子を脇において、かいがいしく食べさせています。これ、はやりでしょうか。
極め付けを見ました。おしめをしている子供を料理の並んだテーブルのうえに座らせて、夫婦二人で食べさせていました。あきれるを通り越して、この大胆さというか無知さかげんには感心してしまいました。きっと家でもそうしているのでしょう。おばあちゃんが一緒に住んでいたら、あり得ないことです。
旅行・温泉・料理などのテレビ番組は、予算も視聴率もそこそこ、お手軽レジャー番組として毎日どこかの局で放送されています。必ず食事のシーンがありますが、箸の持ち方がクロスしていたり、箸を顔に垂直に向け、まっすぐ喉に突き刺すようにして食べ物を口に運ぶ女の人が出演したりします。お手軽とは言え、グルメ番組ですから、食べ方の作法ぐらいは心得ているタレントを使うべきだと思います。
一人暮らしも考えものです。20歳そこそこ、しつけが不十分なまま、都会にでてきた人などは、食事にかぎらず、マナーがいまひとつです。アパートに帰っても教えてくれる大人がいません。特に芸能人に顕著で、なまじ、売れっ子だと回りもチヤホヤして、注意しませんから覚える機会がありません。案外、こんな人がグルメ番組に出ているのでしょうか。こうした人たちが産んだ子供は、どんなおとなに育つのでしょう。
昔から、洋の東西、時代や身分、貧富の差に関係なく、食事のしつけは親として子供に教えるべき、最も重要な課題だったはずですが‥‥。