今が好き♪
1998.4.1
長野五輪が終わり、閉会式の挨拶の中でサマランチ会長は「期間中、停戦が守られ、オリンピックが平和裏に終わった。」と言う旨のコメントをしました。折りしも、フセイン大統領の大量破壊兵器製造疑惑で、査察の諾否を巡りもめていた時期でした。クリントン大統領によるイラク空爆が結局は実施されなかったことに触れたのでしょう。武力で脅すのはペリー提督の黒船以来、アメリカのお家芸ですが、だんだん通じなくなってきました。
前回の湾岸戦争はまだ記憶に新しいことですが、あの戦争終結後の91年夏、海上自衛隊の掃海部隊がペルシャ湾に派遣されました。最も危険な湾最奥部を担当し、実戦経験がないにもかかわらず、機雷の除去作業でその優秀さを実証して見せたのです。日本は国際貢献の名の下にとうとう自衛隊の海外派兵を実現させてしまいました。
この掃海艇、我が国では日立造船と日本鋼管の2社で建造されています。外観からは鉛色の塗装で分かりませんが木造船です。機雷が金属に反応して爆発することを思えば、納得の行く話ですが、軍艦なのに木造とは驚きです。
FRP製では数百トンの外洋艦艇は無理。のこぎり・カンナ・かなづちで造ります。海上自衛隊には「やえやま」と言う基準排水量千トンに達する大型の新鋭掃海艦もあるのです。もちろん船体は木造。帆船と並び、船の芸術品とも言われて、船体加工・曲面形成工程には百人ほどの木工職が必要で、完成まで3、4年掛かるそうです。
最近では発注の無い年も多く、職人の高齢化、手空きによる技術維持・継承の困難さ等で、国を守る為とは言え、両社とも採算面では厳しい部門となっています。現在の新造船は漁船、ヨット・モータークルーザー等のレジャー船をはじめ、中・小型船舶の船体はFRPかアルミ製、大型艦船は鋼鉄製ですから木造船の出番はほとんどありません。軍事目的では困りますが、永年培われてきた、我が国の木造船建造技術をなんとか別の方法で残したいものです。