今が好き♪
1997.11.1
今年の1月に仕事で友人と大分市にでかける機会があった。大分は初めてである。空港から市内までホーバークラフトなどという珍しいアクセス手段。これは気に入って帰りも利用する事になる。日帰りのつもりが一日で打ち合わせが終わらず、先方の都合で翌日午後に再打ち合わせとなってしまった。翌朝から午後2時まで時間が空いて、さて どうしよう。市内は昨夜うろついたし、ほかに行くあてもべつにないし。で、大分・別府・温泉・地獄巡りと単純な図式から地獄見物でひまつぶしをすることになった。別府までL特急で一駅10分。案の定、ありました。「亀ノ井バス」駅前営業所。時間的に ちょうど良い地獄めぐり観光の3時間コースを選んだ。客は私たち2人を入れて10人程度。もちろんウイークデイで年配者が多い。がら空きの観光バスに若いガイド嬢もついて、これでペイするのかな?
さて、火山大国日本ならではの有名観光地の見学だ。観光客は意外と多い。海地獄から始まって血の池地獄まで、熱気、噴煙をあげる白・青・赤色等の池を8つ巡るのだが、これが地獄というには全体にスケールが小さく、物足りない。温泉池の周りには鬼や龍 の大きな像を置いたり、ワニ・カバ等の動物を飼ったりしている。設備は比較的新しいようだがなんとも発想が古い。伊豆熱川などもそうだが、なぜ温泉にワニなのだ?悪い事に、この友人とは昨年ラスベガスのコムデックスへも一緒している。彼の地は砂漠でなにもない。そこにあれほどの娯楽施設と巨大ホテルを出現させ、世界中からお客を集めて、毎日お祭りさわぎだ。
一方ここ別府には、海あり、山あり、温泉あり。交通、人口集積度どれをとっても好条件だ。しかるにこの落差はなんなのだ。我々は見物半ばにして不満を口にしだした。
ここの目玉は国の天然記念物にも指定されている「間けつ泉」であり、龍巻地獄で観ることができる。1時間あまりの間隔で数分間、熱湯を最高50メートルの高さまで噴き上げる噴泉だという。案内のパンフレットにも、説明の看板にもそう詠われている。この噴泉を見て私たちは唖然とした。なんと噴出口にコの字を左90度回転させたよう な石造りの囲いがされていたのだ。周り三方と上部をふさがれ、観るのは一面からのみ。このため勢いよく飛び出した噴泉は3メートル程の高さで天井にぶつかり、あとはモウモウと湯気をあげながらビシャビシャたれるだけ。観光地であきれることは多いけど、これはあんまりだ。私たち2人はしばし顔を見合わせて口をあんぐり。例によって陳腐 な規制や安全上の何かがあるのかも知れないが、地獄巡りの売り物なら、なぜ思う存分 噴き上げさせてあげないのだろう。
ラスベガスの見世物は全て作りものだ。彼らが逆立ちしても見せられない物がここにあるじゃないか。遠巻きに柵をして、傘を差してもかまわない。50メートル上空に噴き上げる温泉を是非見せてもらいたい。熱湯も50メートルの高さから落ちればもう熱くないし、隣の地獄ではやけどに効く「血の池軟膏」も売っているのだから。